Vol.10
宮田 恵理子
-Alchemy-
1993年生まれ。東京芸術大学美術学部先端芸術表現学科卒業後、 チューリッヒ芸術大学にてMaster Fine Artを修了。私がスイスに留学中、仮想通貨について多く話されるようになった。仮想通貨に詳しくなかった私は調べていくうちに、スイスが素粒子物理学と金融が交わる場となっていることに気がついた。様々な国の中央銀行と関わっている国際決済銀行や、World Wide Webやタッチパネルを開発した素粒子物理学の研究機関であるCERN、そして仮想通貨に関わる人々が働くCrypto Valleyが一つの国で共存していると気がついた為だ。複雑な繋がりを可視化する為、関連する場所を探し、3Dスキャンスナップショットを行った。インターネットを通じて可能になった表現方法が、それなしでは存在し得ない「価値」にまつわる場所とどのように呼応し合い可視化されるかを試みた。
Web
Antonio Scoccimarro (Mousse Magazine 編集長) 賞
小林 菜奈子
-距離のない距離の移動-
2000年 福岡県生まれ。ある外国のネットニュースに掲載されていた「1枚のQRコード」が写った写真を私は興味本位で読み取った。
すると自分のスマートフォンには、飲食店のメニュー表が写し出されたのだ。遠く離れた日本の地でも海外の飲食店にいるような高揚感と共に、どこか不思議な感覚を味わった。
美術家エドムント・デ・ワールの「収集はその地に根を下ろす最適な方法である」という言葉がある。
この作品は、世界各国の飲食店のQRコードメニューを収集し、関連する地を虚と実を交えながら訪れていく旅である。遠い地の料理を見て想像しても、実際に食べることだけはできない。虚像と実像を自由に行き来することで、どんな地にでも根を下ろすことが可能となった生活を垣間見ることを試みている。
Web
太田 睦子 (IMA エディトリアルディレクター )賞
岸野 祐貴
-Rivers of Sand-
1982年生まれ。シュテーデル美術大学卒。
コンピューターコードから生成されるイメージは何を表すのか。鑑賞者の記憶や視覚リテラシーは、そこに何かを喚起させることができるのだろうか。この作品は、これらの問いに沿って、デジタル画像処理やコンピューターグラフィックスに見られるアルゴリズムを用い、計算科学の観点からカメラレス写真を探求するシリーズの第一作目です。
Web
Elisa Medde (Foam magazine 編集長)賞
余宮 飛翔
-recalling-
知らない土地で古い喫茶店に入り、ブレンドコーヒーとフルーツタルトを頼んだ。
店の奥には常連らしい気品ある高齢の夫婦が座っている。
コーヒーを飲みながら夫婦の会話を聴いていると、いつの日かの記憶が混ざり合いながら情緒と共に湧き上がる。
この記憶と情緒は、私だけのものじゃないかのように新鮮だ。
Web
Xiaopeng Yuan (写真家・SAMEPEAPER 編集長) 賞
溝渕 亜依
-深・風景-
深・風景とは、どの程度の深さからを深・風景というかの明確な定義はないが、一般的に“見えること”の3cm深く、意味に到達する3cm手前の領域を指す。深風景には物事を理解することに必要な意味が届かないため、表層とは関係性や意味が大きく異なる。沈黙、意味の欠落、不明瞭な環境条件のため、表層のそれらとはまた異なった意味・関係性を持つものも存在する。
Charlotte Cotton(キュレーター / ライター)賞