Vol.1
森川 陽介
-The Edge of Night-
Concept
この作品は近代化以前の日本の世界観の一つである境界を通して、現代の東京及びその周辺を撮影することを主題としている。境界とは日本民俗学における概念で、「二つのカテゴリーが相接し、交錯するところ」という意味を持つ言葉であり、「生と死、現世と異界、現実と夢、男と女、昼と夜」など隣り合う二つの領域の間に存在する不安定な世界を指す言葉である。
作中では、夢に影響を受けながら現実を生きる元オウム信者の女性など二つのカテゴリーの間で揺れ動く人々を撮影している。また、歴史的に境界の象徴として考えられてきたものや、私にとって現代の境界と感じられるものも撮影している。最後に、私は作品全体を境界と深く関連する日本神話の一節に基づく架空の物語となるように並べ替えた。それは、ノンフィクションとして撮影した写真群をフィクションの物語へと並び替える行為自体が、現実と想像の間に存在する境界であると考えたからである。
Profile
1979年 東京生まれ2003年 東京工芸大学芸術学部写真学科卒業2005年 エジンバラ芸術大学デザイン学部写真学科修士課程修了
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Comment
意図的に操作したり、接写して抽象化させたりとかカメラの性能が上がったおかげで、意識的に作られた表面美の写真は最近とても多く見る機会が増えている。森川陽介の写真はとてもストレートで嘘偽りのないピュアで、被写体と真剣に向き合った作品だと思った。
石井孝之(タカ・イシイギャラリー)
水谷 吉法
-写真とはなんですか?-
Concept
ただただ、写真の表面性だけを追求する。写真のコンセプトや内容などはない。作品の背景を知ること、読み解くことが作品への理解を深め、その奥にある目に見えない何かを探ろうとするのであれば、その行為は必要ない。私の作品は写真であるということだけで成立している。
Profile
1987年 福井県生まれ
2010年 日本大学経済学部卒業
2012年 東京綜合写真専門学校卒業
Solo Exhibition
2015年 YOSHINORI MIZUTANI (POP-UP EXHIBITION) , Graanmarkt 13, Antwerp
2015年 COLORS / TOKYO PARROTS , IMA Gallery , Tokyo
Grope Exhibition
2015年 SHASHIN! Japanese Photography Then/Now, Sotheby's Hong Kong Gallery, Hong Kong
2015年 Young Portfolio 2014 , Kiyosato Museum of Photographic Arts (KMoPA) , Japan
2015年 NEW JAPANESE PHOTOGRAPHY , DOOMED GALLERY , London
2015年 LUMIX MEETS BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #2 , IMA CONCEPT STORE , Tokyo
2014年 LUMIX MEETS BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #2 , Yellowkorner Gallery Paris Pompidou , Paris
2014年 Foam Magazine Talent 2014 exhibition,East Wing Gallery, Dubai
2014年 LensCulture Emerging Talent Awards 2014 exhibition, Galeria Valid Foto, Barcelona
2014年 Foam Magazine Talent 2014 exhibition, Unseen Photo Fair, Amsterdam
2014年 Foam Magazine Talent 2014 exhibition, Atelier Neerlandais, Paris
2014年 TOKYO2020, Christophe Guye Galerie, Zurich, Switzerland
2014年 Light and moment vol.17-spirited photographers- , Recto Verso Gallery, Tokyo, Japan
2013年 TOKYO 2020 By Japanese Photographers 9, 1 Rue Richelieu, Paris / Hillside Forum, Tokyo, Japan
2011年 Those Born From Room, Count Down Gallery Momozonogaro, Tokyo, Japan
2010年 THESE DAYS, Gallery Mestalla, Tokyo, Japan
Awards
2014年 LensCulture Emerging Talents Top 50, Paris
2014年 Foam Talent, Amsterdam
2014年 Young Portfolio, Kiyosato Museum of Photographic Arts (KMoPA), Japan
2013年 Tokyo Frontline Photo Award 2013 Jury Award (selecting judge : Taisuke Koyama), Tokyo
2013年 Japan Photo Award 2013 Jury Award (selecting judge : Ivan Vartanian), Tokyo
2012年 Awarded Tokyo Frontline Photo Award 2012, Tokyo
Books
2015年 COLORS , amana / IMA photobooks, Tokyo
2014年 Taxi Dirty Books, Boabooks, Genève, Switzerland
2014年 Tokyo Parrots, amana / IMA photobooks, Tokyo
Biblography
2015年 NIPPON CAMERA, #6/2015, Japan
2015年 The Hokkaido Newspaper, 22 March, Japan
2014年 Libération Newspaper, 10 November, France
2014年 TOKYO 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHER #2, IMA photobooks, Tokyo
2014年 SPUR, December 2014, JAPAN
2014年 Gente di Fotografia #59, Italy
2014年 NEON Magazine, #09/2014, Germany
2014年 The Observer newspaper, 6 July, UK
2014年 NEON Magazine, #01/2014, Germany
2014年 Esquire THAI EDITION, WATCH ISSUE, June 2014, Thai
2014年 GUP Magazine #42, Open Spaces, August 2014, Amsterdam
2014年 Foam Magazine #39, Talent, September 2014, Amsterdam
2013年 TOKYO 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERES 9, IMA photobooks, amana, Japan
2013年 The art of LUMIX / LUMIX GM, Panasonic, amana, Japan
2013年 IMA Magazine Winter Vol.6, "STEP OUT Vol.2", Tokyo, Japan
2013年 KRITIKA OUTSIDER, Germany
2012年 Gypsé Eyes magazine #4: The Magic Issue, NY
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Comment
今回の参加者の中で、写真を上手に撮っている方が何人もいました。水谷さんは表面的に上手に撮っていますが、多くの人と同じ様に上手に撮ることがゲームとなっているかもしれない。彼が選んでいるテーマ、撮影の仕方など、決められている構築した形がなくて全てがフラットに見えます。そういう写真らしいところを把握している水谷さんの、今後の写真が成長したらどうなるのかが気になって選びました。
アイヴァン・ヴァルタニアン (GOLIGAディレクター)
山田 博行
-waterproof-
Concept
厳冬期の北。気温はー30度くらいだろうか。すべてが凍り付いた風景を前に僕は独りで何日もすごし、誰とも話さず、ふと気づけば、時間の完全に止まった空間に立ちつくしていた。
曇天の空からゆっくりと落ちてくるひとひらの雪片だけが時が流れている事をささやいている。天気は悪く天地の境目のわからない。雪で覆われたいくつもの丘陵を越えていくと、眩しいほどの青を放つ水の群れが古代遺跡のように迷いのない姿でたたずみ氷った姿で圧倒的存在感を放っていた。無音、そしてなにも動かないのに、ぼくはこの巨大神殿の前で激流に巻かれて息がつまり大波にのまれそうになっていた。あれは幻だったのだろうか。
Profile
1972年 新潟県生まれ
武蔵野美術大学卒業
Solo Show
2013年 「山田博行の写真」展" ソフィアセンター(新潟)
2012年 "Peak Moments" ギャラリー 十三代目 長兵衛(新潟)/ "Tuesday" スロープギャラリー(東京・千駄ヶ谷)
2011年 "Peak Moments" 長岡造形大学ギャラリー(新潟)
2010年 "Northern Highlights" ザ・ノース・フェイス 特設ギャラリー(原宿、福岡、静岡)
Comment
氷しか写っていないのに、多彩な氷の表情をとらえて飽きさせない。氷しか写っていないのに、そこには写っていない他のなにかへの想像を掻き立てる。写真家が見てきたもの、考えてきたことが氷のイメージに反映されて、この人がこれまでさまざまな対象と向き合ってきたことを感じさせます。表現が多様化し、写真の幅が拡大する中で、ストレートな写真とそこに浮かび上がる写真家の思考の痕跡には、意外な強さがあります。
太田 睦子 (IMAエディトリアルディレクター)
MOTOKI
-SUMO-
Concept
1年に1度、靖国神社で神々への奉納相撲が行われる。
その 奉納相撲を見たのが、生で相撲を見た最初だった。
本物の相撲を見たとき、不思議だった。
無言で無表情で人間ではないように思われた。
そして、裸体の力士が戦う姿は神聖であり、神秘的だった。
神秘性を表現するため、リアリティを排除したかったので、
力士以外が写っている背景を排除した。
また、動きの美しさを表したかったので、長秒で撮影した。
Profile
東京理科大学 理工学部物理学科卒業
Comment
面白いコンセプト。面白い絵。面白い。
原田 知大賞 (TOKYO PHOTO)
吉楽 洋平
-BIRDS-
Concept
ある日蚤の市で一冊の鳥の本を見つけました。私はその本の中に、既に前の持ち主によって鳥の絵が切り抜かれたページがあることに気が付きました。この作品は一冊の本から鳥を解放すると共に、100年以上前の博物画家が見たであろう鳥の姿を、今一度自然の中で再現する試みです。私は自らのステートメントの代わりに、彫刻家トニー・クラッグの次の言葉を引用します。「将来、大空を飛ぶ鳥が全ていなくなるというような想像をすることは、とても悲しいことだ。自分は出来れば、そうなってほしくはないけれども、もしそうなったら、鳥の替わりに、鳥に負けないくらい美しいものが大空に飛んでいてほしい」
Profile
1979年生まれ
日本大学芸術学部写真学科卒業
Solo Show
2012年 "QUEITUDE" SLANT gallery
Group Show
2012年 "BIRDS" 写真新世紀展 東京都写真美術館
2011年 "Fireworks"チェルシーインターナショナルファインアートコンペティション展 Agora gallery
Prize
2013年 First Book Award Finalist 2012年 写真新世紀優秀賞 2011年 写真新世紀2011佳作
2011年 チェルシーファインアートコンペティション2011受賞
Comment
彼の作品を見ていたら、忘れかけていた懐かしい記憶が蘇った。これは写真を使った蘇生の儀式か何かなのではと思わせる、新しい写真体験だった。
八木沢 俊樹(JAPAN PHOTO AWARD)